11月1日は、サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団の来日公演を聴きに、サントリーホールに行って来た。
もちろん、お目当ては庄司紗矢香のソロによるメンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」である。3年前の来日公演をテレビで観たが、ほとんど目をつぶったまま演奏する庄司紗矢香が、時折、テルミカーノフを見つめる時の信頼のこもった目が妙に印象に残った。席は、前から4列目の右端。オケの全貌をみることはできないが、指揮者越しに庄司紗矢香をみるには絶好の位置だった。
1 ロッシーニ「セビリャの理髪師」序曲
2 メンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」
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バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ」第2番から「サラバンド」
3 ストラヴィンスキー「春の祭典」
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エルガー「ニムロッド」
プログラムに庄司紗矢香のインタビューが掲載されていたが、その中で彼女は「
テルミカーノフ氏の指揮は魔術です。音楽が常に生命を持っていて、ノーブルです。共演していて音楽のケミストリーを感じます」と語っていた。テルミカーノフの指揮は本当にユニークで、指揮棒を使わないところはゲルギエフと同じだが、ゲルのエネルギッシュさとは対局にある省エネの指揮で、必要のないところは振らないようにしている風だった。
圧巻は、メンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」だ。ソリストとオーケストラと指揮者が全幅の信頼を寄せ合って初めて成立するような、豊かで暖かみのある演奏であった。
アンコールのバイオリンソロ「サラバンド」がまた凄かった。東日本大震災の犠牲者への追悼の気持ちを込めたのであろうか。音楽が東北の海に届いていくような気がした。楽団で最年少と思われる若い女性バイオリニストが、身を乗り出すようにして庄司紗矢香のバイオリンを聴き入っていた。
「春の祭典」は騒々しくてあまり好きではないが、アンコールの「ニムロッド」はメリハリがあってコンサートが引き締まった。