今日(5月5日)は、劇団民藝の公演 「十二月 下宿屋『四丁目ハウス』」を観に、新百合ヶ丘の麻生市民館に行ってきた。
作=小山祐士
演出=高橋清祐
出演=梅野泰靖 奈良岡朋子 樫山文枝 日色ともゑ
今日の公演は、毎年ゴールデンウィークに開催されるイベント「川崎・しんゆり芸術祭(アルテリッカしんゆり)」のプログラムの一つとして企画されたもので、当初販売予定の座席は満席となり、ホール後方の追加席もかなり埋まっていた。川崎市に避難している被災者も招待されていたようだ。
昭和初期の大恐慌の時代、大会社からリストラされた元サラリーマンがはじめた下宿屋が舞台で、「大学は出たけれど」就職先がみつからないとか、景気が悪く閉塞した状況は、今と共通している。下宿屋の主人夫婦を中心に、下宿している学生や就職してまもない若者たちが織りなす人間ドラマである。出世のために財閥の娘と結婚しようとする官僚は今でもいるかもしれないが、その分不相応な政略結婚を成功させるために、兄である主人公が下宿屋をやめて売却しなればならないという事情が、私にはどうも理解できなかった。
豪華出演陣の中でも、下宿屋のおかみを演じた奈良岡朋子の演技がひときわ光っていた。台詞がはっきりして、つぶやきまでも伝わってくること、立ち居振る舞いの速さや正確さ、からみのうまさは秀逸で、まったく歳を感じさせない。梅野泰靖も、笑いを誘うはまり役で、奈良岡との息もぴったり合っていた。樫山文枝も先日の「シーバ」とはまた違う妖しい魅力を出していたし、日色ともゑもよくあんな若々しい役を演じられたものだと感心した。
劇団民藝らしい、本当に作り手一人一人の真摯さを感じさせる芝居で、いいものを観させてもらった。ありがとう。