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オペラ「カラマーゾフの兄弟」世界初演

 7月23日、マリインスキー劇場でオペラ「カラマーゾフの兄弟」(作曲:スメルコフ、指揮:ゲルギエフ)の世界初演を観てきた。

オペラ「カラマーゾフの兄弟」
(写真は、visualrian より)

 躍動感あふれる指揮で、手兵のマリインスキー劇場のオーケストラと、ソリスト達やコーラスを思うがままに操るゲルギエフの見事さには感心した。スメルコフの曲もワーグナーを彷彿とするような正当派のオペラでよくできていた。特にモークロエでのハチャトリアン的なお祭り騒ぎや、第二幕後半でしばしば登場するショスタコービッチ的な盛り上がりをみせる音楽は素晴らしい出来で、後世にのこると思った。

 脚色や構成も本当によくできていた。例えば、カテリーナとグルーシェニカの対決など、原作の名場面のいくつかを盛り込んであるほか、通奏低音のように開幕から閉幕まで何度か大審問官が登場し、原作の思想的な深さを効果的に再現している。セリフのないキリストのラストシーンの演技は、昔の山海塾のような迫力を感じた。

 舞台美術も、マリインスキー劇場の奥行きのある回り舞台の特性を生かして、異なる4つの面を持つ建物を回転させ、あっという間に場面を展開し、スピーディなドラマの進行に成功した。

 本当に感動したのひとことである。次回のマリインスキー劇場の来日公演では、ぜひ「カラマーゾフの兄弟」の日本初演が実現することを祈る。
JUGEMテーマ:ロシア


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まいじょ * オペラ * 16:11 * comments(2) * trackbacks(0)

明日ペテルブルクに出発

 いよいよ、明日、ペテルブルクに向けて出発する。ここ2、3ヶ月、マリインスキー劇場やエルミタージュ美術館など、ペテルブルクの街のことばかり考えてきた。この日が来るのを待ちこがれていたので、出発時間が迫るにつれて何だか胸が苦しくなる。
ロシア東部の地図

 サンクトペテルブルクは、ちょうど白夜の季節。小説だと夏は暑くて、悪臭ただようようなイメージが強いが、MSN 天気予報によると、サンクトペテルブルクの朝7:30分現在の気温は15℃、今日の最高気温は23℃というから、東京より10℃くらい涼しいことになる。ヨーロッパの北の方の夏ははじめて経験するので、どんなものか楽しみである。

 致命的な忘れ物のないようにして、事故や犯罪にあわないように気をつけて行動しよう。約1週間、ペテルブルクをおもいきり楽しんできたい。
まいじょ * 旅行 * 12:44 * comments(4) * trackbacks(0)

オペラ「カラマーゾフの兄弟」事前情報

 今回のロシアの旅のハイライトは、オペラ「カラマーゾフの兄弟」の世界初演を観ることだが、このオペラについて現在日本で得られる情報はごくわずかしかない。

マリインスキー劇場

 まず、マリインスキー劇場のホームページから。

Wednesday, 23 Jul 2008, 19:00
Mariinsky Theatre
1, Teatralnaya Square

The Brothers Karamazov

opera mystery in two acts after the novel by Fyodor Dostoevsky
Music: Alexander Smelkov
Production by Vasily Barkhatov (2008)

Conductor: Valery Gergiev

Libretto by Yuri Dimitrin
Musical Director: Valery Gergiev
Stage Director: Vasily Barkhatov
Set Designer: Zinovy Margolin
Costume Designer: Maria Danilova
Lighting Designer: Damir Ismagilov

Premiere at the Mariinsky Theatre: 23 July 2008

MARIINSKY THEATRE

 サンクトペテルブルクの英字紙のWEBにこんな記事があった。

 今年の白夜祭でも世界初演のアレクサンドル・スメルコフのオペラ「カラマーゾフの兄弟」が上演される。スメルコフは、サンクトペテルブルクの作曲家で、彼の息子パヴェル・スメルコフはしばしばマリインスキー交響楽団の指揮を行っている。現代作曲家をクラシックホールでとりあげようというゲルギエフの運動の一環として、マリインスキー劇場からオペラの作曲を委嘱されたものである。
The St. Petersburg Times


 この精神において、今月は世界初演のアレクサンドル・スメルコフのオペラ「カラマーゾフの兄弟」が上演される。アレクサンドル・スメルコフは、尊敬されるサクンクトペテルブルクの作曲家で、マリインスキー劇場からオペラの作曲を特に委嘱された。

「作曲家は、ドストエフスキーの傑作に対しやや型破りのアプローチを提案した」とゲルギエフはいう。「彼が最も興味をもち、焦点をあてたのは大審問官のせりふである。この作品はすべての人々の好みに合うものではないかもしれないが、こうした実験が劇場を活性化させるものと私は確信している。」

 10年前、ゲルギエフがロシアを世界一のクラシック音楽の国にすると誓ったとき、彼が最初にしたことは、世界で最も有名なオペラをあえてロシア語で公演する試みだった。
The St. Petersburg Times


 ゲルギエフが深く関わるロッテルダム・フィルの「ゲルギエフ・フェスティバル2008」に今のところもっとも詳しい記事が載っていた。ロッテルダムでは、9月にカラマーゾフの兄弟のヨーロッパ初演が行われる予定になっている。

 9月7日日曜日に、ゲルギエフ・フェスティバル2008では、ロシアの作曲家アレクサンドル・スメルコフによるオペラのヨーロッパ初演を提供する。 ワレリー・ゲルギエフはマリンスキー劇場の交響楽団、合唱団、およびソリストたちを指揮する。スメルコフ(マエストロ・ゲルギエフが個人的に見いだした)は、ロシアの戦後世代の偉大な作曲家の一人であると考えられる。 スメルコフの音楽は、ときにシンプルに思わせる、強く、控え目なテンションが特徴となっている。例えば、オペラ「カラマーゾフの兄弟」は、スメルコフが成長したブレジネフ時代の厳しいソビエト・ロシアを強く意識させるものである。
Gergiev Festival 2008 - Hemel en Aarde -


 アレクサンドル・スメルコフのオペラ「カラマーゾフの兄弟」(ドストエフスキーの同名小説による)で、大審問官は「誰か火焙りにされるのに値するとすれば、まさしくおまえだ」と言った。他の者に対してならばともかくとして、神の子イエスに対して大審問官は非常識にもこう言い放ったのである。復活したイエスはまるで極悪人のように鉄鎖でしばられた。「なぜ、われわれの仕事を邪魔しにきたのだ?」

 ラスカトフ、マルティノフ、スミルノフといった作曲家とともに、アレクサンドル・スメルコフ(1950年生まれ)は、ロシアの作曲家の戦後の世代に属する。彼らは、1970年代に登場し、流行のモダニズムのただ中にあって、彼ら独自の音楽を見いだそうとした。スメルコフ自身は、ロシア・アヴァンギャルドに対して強く反発した。彼は、ロシア・アヴァンギャルドを「暗くて、破壊的な力があらわれたもの」と言ったことがある。スメルコフは、「精神性と調和」(spirituality and harmony)こそが最善のものであり、「全世界的な人間の統合」(universal brotherhood)が彼の最新作のテーマだという。

 スメルコフの言葉は、ソビエトの公式のイデオロギーに盲目的に従う作曲家の原則の宣言のように聞こえる。 「全世界的な人間の統合」は、実際にスメルコフの新作オペラで大きな役割を果たしている。大審問官は「人間は統制され、自由をあきらめ、われわれの意志に委ねたときにはじめて、自由になるものだということを納得させられる」。スメルコフが育ったブレジネフ時代のソビエトを想起しないでは、これらの言葉を受け止めることはできない。これは、疑いもなく、未熟な判断のようにみえる。

 でも、このような混乱は理解できないわけではない。スメルコフの音楽には、変な突出
や欠落がない。 彼の最初の交響曲(1974)がすでにそうであった。 作品は、大学2年生のワレリー・ゲルギエフの指揮で初演された。ゲルギエフは、スメルコフの新作オペラをおしすすめる力となっている。数年間にわたって、ゲルギエフはスメルコフの進歩とともに歩んできている。微妙なリリシズムと分かりやすいメロディーが進歩し、常に質の高い作品を生んでいる。スメルコフ作品の質が高かったからこそ、彼はロシアで評価を得ているが、皮肉なことに、西側ではまったく無視されてきた。

 しかし、流れは変わりつつある。 今夏、スメルコフの「カラマーゾフの兄弟」は、サンクトペテルスブルクで初演される。その後、ゲルギエフ・フェスティバル2008(ロッテルダム)やロンドン(2009)でも上演される予定である。音楽におけるモダニズムは、新しい旋律の美しさ(New Melodiousness)にとってかわることになる。「精神性と調和」は君臨する。 スメルコフにとって期は熟したようだ。今や「普遍的な人類愛」を待つのみだ。
Gergiev Festival 2008 - Hemel en Aarde -


 フョードル・カラマーゾフが殺されたとき、彼の三人の息子全てが動機を持っているように見えた。 続く過程で、霊的なドラマは展開した。 だれが殺人を犯したかの謎は、自由意思のようにそこほど重要でなくなるように思える。 ジークムント・フロイトによると、カラマーソフの兄弟は今まで書かれた中で最も良い小説である。 アレクサンドル・スメルコフは、彼のオペラを「大審問官」という主要な章をベースとした。 今夏、オペラはサンクト・ペテルスブルクで初演することになっている。
Gergiev Festival 2008 - Hemel en Aarde -

 どうやらオペラ「カラマーゾフの兄弟」は「大審問官」の章に焦点をあてるようだ。あの難解なやりとりをどうやって脚色するのだろうか。
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まいじょ * オペラ * 20:30 * comments(0) * trackbacks(0)

「ゲルギエフとサンクトペテルブルグの奇蹟」

 アメリカ人の音楽評論家ジョン・アードインによって書かれた、偉大なるマエストロ、ワレリー・ゲルギエフによるマリインスキー劇場の復活と挑戦の物語(亀山郁夫訳)である。

「ゲルギエフとサンクトペテルブルグの奇蹟」表紙

 著者は、グルジア出身のピアニスト、アレクサンドル・トラーゼ(日本ではNHK「スーパーピアノレッスン」の講師として知られる)を介してゲルギエフと知り合い、「キーロフについて本を書いてみたらどうだい?」と勧められた。ゲルギエフは、キーロフの本は広い視野を持つロシア人以外の人物によってそれは書かれるべきだと固く信じていた。そのねらいは、本書で見事に成功しており、ゲルギエフの広報の分野における驚くべき才能を物語っている。

 著者は、1年あまりのサンクトペテルブルグ滞在でこの本を書き上げたが、マリインスキー劇場の長い歴史を、まるで見てきたかのように生き生きと描いていることに感心した。リサーチャーとしても抜群の才能をもった人なのであろう。文章力も確かである。サンクトペテルブルグの白夜の季節について、アードインは次のように描写する。

 私たちが到着した時は、季節外れの暑さだったが、それでも緑は眩しかった。サンクトペテルブルグは、白い町とも緑の町とも描写されるが、友人達はよく、雪と氷の世界と、春と夏の青々とした緑の世界のどちらが美しいかを議論したものだった。私は、今はどの両方の美しさがわかるが、木々や公園がきらきらと輝くエメラルドで飾られる時期が一番好きだという者に同調したい。というのも、この時期こそ、あの幻惑的な白夜が現れる季節だからである。
 毎年、二ヶ月間ほど、晩春の頃から、ロシア北部の夜はすべて消えてしまう。闇に近い状態になる時でさえ、空はばら色がかった紫の輝きを保ち、朝日が土地を照らしはじめる前の数時間それが続く。この素晴らしい白夜については、本で読んだり、人からその様子を聞いたりすることはできる。写真にしろ言葉にしろ、現象そのものをとても代弁などしてくれない。日中の太陽が澄みきった光を放ち、夜になると非常に青く光る季節なのだ。そして、夜には、町の公園や、その典雅なスカイライン、壮大な建物がほとんど生きているような雰囲気を帯びてくるのである。

 私は、もうじき白夜祭ではじめて生のバレエ(「白鳥の湖」)を観るのだが、この本の中でアンドリス・リエパが、ロシアのダンサーの特色について次のように述べているのを読んで、ますます楽しみになってきた。

「(ロシアの)ダンサーが共通に持っているのは、踊りながら音楽を感じる能力だ。ロシアのダンサーは決して拍子を取らない。私は、アメリカン・バレエ・シアターと一緒に踊った時に、そこのダンサーがいつも拍子を取っているのを見てとても驚いたよ。ストラヴィンスキー=バランシンのバレエでさえ、私が拍子を取らず、たんに音楽を感じていることが彼らには信じられなかったようだ。これは、西洋と東洋のダンスの大きな違いの一つなんだ。ロシアのダンサーは、音楽を聞くと、それとともにはばたきはじめる。踊っているのは彼らの魂なんだ。(中略)西欧では、『んータ』というようなアクセントでダンサーは下がるけれど、ロシアのダンサーは上がる。私にとっての大きな違いというのは、アメリカのダンサーは、キーロフのダンサーのように、内面から踊っておらず、外面から踊っているということなんだ。私から見ると、彼らは何も感じていないみたいだ」

 ゲルギエフは、ソヴィエト連邦に内側に封じ込められた者の一人であるが、その彼が、同胞に対して皮肉をこめていう。
「ソヴィエト連邦のたくさんの芸術家たちは不平たらたらでした。ロシア人が私を憎むのは、ゴスコンツェルト(ロシア国営のコンサート代理店)が悪いから、ホロヴィッツになれないという彼らの言いぐさです。彼らに本音を言えば、あなたがたはホロヴィッツじゃないからホロヴィッツになれないんだ、ということです!」

 ゲルギエフは、「ソヴィエトは音楽的に非常にリッチな国でした」といい、クラシック音楽にとっては良い環境だったことを認める。

「ソヴィエトはもっと明るくて影があり、プラスであると同時にマイナスであろ。水であり火でした。それは入り組んでいて、天国であったり、地獄だったりしたのです。共産主義者たちの支配下だからといってけっして悪い国ではありませんでした。言い換えると、新しい体制だからといってよいということでもないのです」

 本書あとがきによると、2003年の<白夜祭>のハイライトは、プロコフィエフの大作オペラ《戦争と平和》(トルストイ原作)の再演であったという。2008年の<白夜祭>のハイライトは《カラマーゾフの兄弟》(ドストエフスキー原作、アレクサンドル・スメルコフ作曲)の世界初演ということになるであろう。7月23日が本当に待ち遠しい。

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まいじょ * * 00:03 * comments(2) * trackbacks(2)

亀山郁夫「あまりにロシア的な。」

 新訳「カラマーゾフの兄弟」の翻訳者として、時の人となっている亀山郁夫先生の、1994〜95年のロシア・東欧滞在経験をもとにした「ロシア的なるもの」をめぐるエッセー集である。

「あまりにロシア的な。」表紙

 この本が書かれた時からさらにさかのぼること10年前の1984年8月、著者はヴォルガ沿岸の町ウリヤノフスクでスパイ容疑をかけられ、拘留されるという忌まわしい事件に遭遇した。取り調べ中に尿意をもよおして著者はトイレに行くが、あまりにロシア的なトイレを見て、そのまま引き返した。そんな抑制のきいた記述の中に、私はかえって壮絶なリアリティを感じる。帰国の船上では二度とソビエトの地は踏むまいと胸に誓ったそうだ。

 この時の体験を、著者は最近のブログで「実存的」(《Cafe Karamazov》2 Interesting Topics (2008.06.12) )という言葉を使った。それほどひどいトラウマだったのだろう。

 著者は「ロシア的なもの」を終始淡々と記述する。ウリヤノフスクで起こったような恐ろしい体験ですら、つとめて冷静に書かれている。この本に描かれたロシア像は、ロシアに深く関わる先生の目を通して描かれたロシアである。通りすがりの観光客では決して気づかないことや、ロシア人の研究者たちと高度な知的コミュニケーションができてこそ、見つかるロシアもあるからこそ、面白いのである。それらも含めてこの本に書かれたことはすべて、亀山郁夫先生個人によるロシア観であることは間違いない。でもほかにどんな方法があるというのだ。

 ロシア的なものを確実に見るには、観察者にはある種の決断が必要なのかもしれない。10日後にロシアに行く私は、本書に引用されたワルター・エンヤミンの言葉とそれに触発された亀山先生の言葉を肝に銘じておこう。
「ロシア滞在は、よそ者にとって非常に正確な試金石となる。……ほかならぬロシアにおいては、決断した者だけが、何かを見ることができる」
 ベンヤミンのこの言葉に私は不意を打たれた。おそらくこの言葉は、国家崩壊を経た今のロシアを訪れるものが、心して聞くべき言葉ではないだろうか。希望に満ちた時代のモスクワの記憶が、混迷を極める現代のそれと重なりあうことはない。だが、急進改革派、共産主義者、民族主義者が主導権争いに明け暮れ、空前の政治的ダッチロールを繰り返すなか、人はどんな誹りを浴びせられようと、一つの物差しを選ばなくてはならない。変貌に変貌を重ねるロシアを、複数の物差しで見ることは不可能であり、その変貌に追いつき、追い越そうとするなら、たちまちのうちに判断停止に陥る。何よりもまず足場を固め、「決断」という、何がしかの精巧なプリズムを手に入れなければならないのだ。

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まいじょ * * 00:41 * comments(0) * trackbacks(0)

「ロシアへの旅」日程確定

 来たる7月23日、オペラ「カラマーゾフの兄弟」を観ることを一番の目的として、この日サンクトペテルブルクに滞在するツアーを探し、催行確実ということで、クラブツーリズムの「日本航空で行く 華麗なるロシア世界遺産紀行9日間」(モスクワ→スズタリ→サンクトペテルブルク)に申し込んだことは前に(6/20「ロシアへの旅」)書いたとおりである。

ロシア東部の地図

 ところが、出発前ひと月を切った6月22日、クラブツーリズムから連絡があり、「当初利用を予定していたスズタリのホテルが予約過剰の状況にあるため」、行程をサンクトペテルブルク→スズタリ→モスクワと、全く逆コースにしたというのである。

 そ、そんな、今ごろ逆コースなんて言われても困るのだ。せっかく確保したマリインスキー劇場白夜祭のチケットはどうしてくれる!

 クラブツーリズムに問いただしたが、悪いのは過剰な予約を受けてしまったロシアのいい加減さであって、旅行会社は悪くないのだそうだ。断ればキャンセル料も発生するが、いっそツアーをキャンセルし、航空券とホテルだけ手配することも考えた。しかし、ロシア語がまったくできない私たちには、個人旅行はリスクが高すぎる。それに個人旅行だと、日本語ガイドや車の手配などで結構コストがかさむはずだ。ロシアのようにどこでも行列があたりまえの国では、観光地で長蛇の列に並ばなくてもすむツアーは相当にかなり魅力的だ。海外では、特に、「時は金」である。

 ツアーと個人旅行の両方のいいとこだけを組み合わせることにした。もともとモスクワやスズタリはどうしても行きたいわけではなかった。そこで変更した行程の前半サンクトペテルブルクだけツアーに同行し、途中でツアーから離脱、そのままサンクトペテルブルクにとどまるという、かなり強引なオプションをクラブツーリズムに手配してもらうことにした。これだと、前半で主な観光スポットをツアーで回って土地勘も身に付いてから、後半に個人旅行でロシア美術館などツアーに含まれない名所やドストエフスキーゆかりの地などに行くことができる。災い転じて福となす、なかなかの名案である。

 こうして、難産の末、ようやく「ロシアの旅」の行程が決まった。9日間の行程は次の通りである。
●1日目7/17)成田→モスクワ→サンクトペテルブルク(到着後ホテル)
●2日目7/18)終日:【世界遺産】1日かけてじっくり、サンクトペテルブルク市内観光(青銅の騎士像、ロストラの燈台、巡洋艦オーロラ号、血の上の教会内観(入場)、聖イサク寺院内観(入場)、展望台、運河クルーズ
●3日目7/19)終日:世界三大美術館の1つ、輝かしいロマノフ朝の栄華、エルミタージュ美術館(入場)をたっぷり6時間見学 夜:
●4日目7/20)午前:ピョートル大帝の夏の宮殿の庭園観光、午後:エカテリーナ宮殿(入場)観光(琥珀芸術の最高峰「琥珀の間」にもご案内)

●5日目7/21ツアーから離脱。終日:自由行動。 夜:
●6日目7/22)終日:自由行動。 夜:
●7日目7/23)終日:自由行動。 夜:
●8日目7/24)サンクトペテルブルク→モスクワ→
●9日目7/25)→成田

 このうち、マリインスキー劇場の白夜祭は、既に4日分のチケットをインターネットで確保してある。バレエで最もポピュラーな「白鳥の湖」、名ソプラノ=グレギーナのガラ・コンサート、ポーラックのソロによるラフマニノフのピアノ協奏曲2番、そして最後に世界初演のオペラ「カラマーゾフの兄弟」、しかも3日連続でゲルギエフの指揮で聴けるなんて、何と贅沢な数日間だろう。今回の旅で、クラシック音楽で一生分のツキを使い果たすことになる。
7/19:Ballet "Swan Lake", Music: Pyotr Tchaikovsky, Conductor: Boris Gruzin
7/21:Maria Guleghina Gala Performance, Conductor: Valery Gergiev
7/22:Sergei Rakhmaninov. Piano Concerto No 2, Soloist: Daniel Pollack, Sergei Rakhmaninov. Aleko (concert performance), Conductor: Valery Gergiev
7/23:Opera "Brothers Karamazov" (World Premiere), Music: Alexander Smelkov, Conductor: Valery Gergiev

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まいじょ * 旅行 * 00:00 * comments(0) * trackbacks(2)

青春のロシア・アバンギャルド展

 6月21日、渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムで「青春のロシア・アヴァンギャルド シャガールからマレーヴィチまで」展を観てきた。モスクワ市近代美術館のコレクションで、ロシア革命をはさむ1900年頃から1930年代までのロシア・アヴァンギャルドの絵画を中心に展示している。

ロシア・アヴァンギャルド展チケット

 西欧でも広く知られたシャガールは別として、マレーヴィチやピロスマニ、ゴンチャローヴァといったロシアの画家は、私は名前も知らなかったし、今回初めて観る作品ばかりだった。ロシア・アヴァンギャルドという一世を風靡した芸術運動がいかなるものであったか、絵画におけるロシア・アヴァンギャルドとはどのようなものかを概観するには、ちょうどいい展示だった。音声ガイドと作品についた短い解説の内容が充実していたし、カタログも良かった。

マレーヴィチ_農婦 インパクトのあったのは、マレーヴィチの《農婦、スーパーナチュラリズム》だ。「朝日新聞」の「ののちゃん」のお母さん(まつ子)を思わせるような存在感に圧倒される。時代とともに画風やスタイルが変わっても、描いているものがそれほど変わらないのも面白いと思った。大地や農作業をする人々をモチーフに描きたいという気持ちは、革命とかイデオロギーには関係なく、マレーヴィチの中にいつもあったのだと思う。









ピロスマニ_宴にようこそ! 私が最も気に入ったのは、ピロスマニの一連の絵である。特に居酒屋の看板として描かれたこの絵など、何ともいえぬ味がある。日本では加藤登紀子の「百万本のバラ」で歌われた貧しい画家のモデルが、このピロスマニであるとはこの展覧会ではじめて知った。ピロスマニと女優マルガリータをモデルとした歌は、アンドレイ・ヴォズネセンスキーが作詞した「100万本のバラ」(1982)がオリジナルである。





「百万本のバラ」
(日本語歌詞:加藤登紀子 オリジナル作詞:A.Voznesenskij )
小さな家とキャンバス
他にはなにもない
貧しい絵かきが
女優に恋した
大好きなあの人に
バラの花をあげたい
ある日街中の
バラを買いました
百万本のバラの花を
あなたにあなたに
あなたにあげる
窓から窓から
見える広場を
真っ赤なバラで
うめつくして

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まいじょ * 美術 * 14:06 * comments(0) * trackbacks(1)
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