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日本初演再現第九

 昨日、12月17日(日)は、杜のホールはしもとで「日本初演再現第九」を聴いてきました。今年公開された映画「バルトの楽園」で知られるようになった、板東捕虜収容所でドイツ人捕虜たちによって行われたベートーヴェンの交響曲第9番の日本初演の再現です。

朝日新聞より

 第一部「蘇る松江豊寿!?」は、映画で松平健が演じた板東捕虜収容所長・松江豊寿を永井寛孝さんが演じて、彼のナビゲートによって「日本初演第九」の模様が再現されました。ファゴットがないためにオルガンで代用したとか、面白いエピソードが聞けました。ファゴットは、バズーカ砲と間違えて没収されたのでしょうか。

第九初演の再現

 第二部は、第九の演奏ですが、通常の混声合唱を男声四部合唱に変え、ソロは、ソプラノ:岡本知孝、アルト:前畑晶彦、テノール:志田雄啓、バス:久保田真澄の各氏、オーケスラ(日本初演再現第九管弦楽団)もすべて男性という、珍しいスタイルの演奏でした。1998年に鳴門市で行われた「蘇る第九」公演のプロデュース・編曲・指揮もされたという中島良史さんが指揮をとりました。

第九本番

 映画に便乗したキワモノかもしれないと、演奏にはあまり期待していなかったのですが、男性だけの第九、迫力があって素晴らしいものでした。アマチュアの合唱による第九がさかんで、私も何度か聴いていますが、だいたい女性の方が人数でも多いし、声も出る人が多いので、男性の声がかすんでいる合唱がよくあります。男声四部合唱では、ソプラノ、アルトを1オクターブ下げて歌っていたようですが、編曲の工夫もあって、男声合唱として違和感なく聴くことができました。 ただ、欠けているソプラノ、アルトの声に耳をすましてしまうのは、どうしようもありません。

 名ソプラニスタ、岡本知孝さんの迫力のあるソプラノは、まさしく女まさりでした。



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まいじょ * 音楽 * 23:56 * comments(4) * trackbacks(1)

二ノ宮知子「のだめカンタービレ」

 音楽大学を舞台としたマンガ「のだめカンタービレ」が大ヒットしています。10月からのテレビドラマ化によって、ブームに拍車がかかったようです。

のだめカンタービレ 単行本が発売された頃から、私の周囲のクラシック音楽ファンの間では評判となっており、ひそかにまわし読みされているコミックが、ひと月遅れくらいで私の奥さんのところにもやってきて、私もそれを読んでいました。

 ハチャメチャなギャグマンガでありながら、音楽の本質というか、音楽を演奏することの楽しさや喜びが伝わってきて、思わず感情移入してしまうのです。クラシックはあまり聴いたことがないという人もこのマンガを読むと、たまにはクラシックでも聴いてみるか、という気分になるかもしれませんね。かくいう私がそうですから...。
 
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まいじょ * * 23:59 * comments(0) * trackbacks(7)

華麗なるギャツビー

 村上春樹の新訳「グレート・ギャツビー」を読んだら、急にこの映画が観たくなりました。

華麗なるギャツビー

 多感な学生時代に公開されたこの映画を観て、私はものすごく影響を受けて、それからスコット・フィッツジェラルドの翻訳ものはすべて読んだと思うし、「The Great Gatsby」を少しだけ原書で読んだりもしました。当時、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」とこの「グレート・ギャツビー」の定訳といえる翻訳をした野崎孝は、私の通った大学の教授だったので、一般教養の英語の講義を何度か聴講したこともあります(面白くなかった)。

 昨日の記事でとりあげた小説の冒頭とその続きは、映画ではニックのナレーションで次のようになっています。

 In my younger and more vulnerable years, my father gave me some advice that I've been considering ever since.
 "When you feel like criticising anyone," he told me, "remember that all the people in this world haven't had your advantages."
 In consequence, I'm inclined to reserve all my judgements.

 まだ若く純真だったころ、生涯忘れえぬ助言を父から受けた。
“誰かを批判したくなったときは、自分の尺度ではなく相手の立場で考えろ。”
以来、私は私見を控えている。

 字幕としてはベストの翻訳といえるでしょう。

 フランシス・フォード・コッポラの脚本も本当によくできていて、原作の本質にかかる部分を残しながら、上手にまとめています。ネルソン・リドルの音楽も最高で、ギャツビーのテーマともいえる「What I'll be?」が流れると、何とも切なくなります。

 ギャツビー(ロバート・レッドフォード)は、一度は愛を誓ったデイジー(ミア・ファーロー)がなぜ自分の帰りを待てずにほかの男と結婚したのかを問いつめたときの答えです。

 Because, rich girls don't marry poor boys, Jay Gatsby. Haven't you heard? Rich girls don't marry poor boys!

「裕福な女は貧しい男とは結婚しない。知らなかった? 貧しい男とは結婚しないの」

 こういう嫌な女が相手でも、惚れた男って本当に馬鹿ですね。何年も努力して大金持ちとなり、デイジーの桟橋の緑の灯火を対岸にみる豪邸を手に入れたり...。でも、そういう見果てぬ夢を追うところに男のロマンを感じます。
JUGEMテーマ:名画


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まいじょ * 映画 * 12:16 * comments(5) * trackbacks(3)

スコット・フィッツジェラルド「グレート・ギャツビー」

 村上春樹による「グレート・ギャツビー」の新訳が出たので、さっそく読んでみました。野崎孝訳で何度も読み、映画「華麗なるギャツビー」も観ており、ストーリーはすっかり頭に入っていることもあって、一気に最後まで読んでしまいました。

 訳者あとがきとしては異例なほど長いあとがきを読むと、村上春樹がこの小説の翻訳に取り組んだ情熱のすさまじさが伝わってきます。翻訳にあたって彼が心がけたという、古典ではなく「現代の物語」にすること、フィッツジェラルドの文章のリズムを日本語におきかえることの二つは、かなりな程度、成功したといえるでしょう。

 私にとってやはり野崎孝訳でなじんでいた「ライ麦畑でつかまえて」が、新たに村上春樹訳の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」として出たときは、確かに新しい訳だとは思ったけど、それ以上の感動はありませんでした。野崎訳でも十分に新鮮で現代的だったし、私はその文体を模したといわれる庄司薫の小説にもぞっこんだったので、旧訳で十分だと思ったのです。原書を読む際にお世話になった野崎孝を擁護したい気持ちも働いたのかもしれません。しかし今度の「グレート・ギャツビー」では、野崎孝の仕事をはっきり超えたといえると思います。

 この小説の冒頭が大好きなので、ほんの少しだけ例をあげてみましょう。
《原文》
 In my younger and more vulnerable years my father gave me some advice that I've been turning over in my mind ever since.
 'Whenever you feel like criticizing anyone,' he told me, 'just remember that all the people in this world haven't had the advantages that you've had.'

《野崎孝訳》
 ぼくがまだ年若く、いまよりももっと傷つきやすい心を持っていた時分に、父がある忠告を与えてくれたけれど、爾来ぼくは、その忠告を、心の中でくりかえし反芻してきた。
「ひとを批判したいような気分が起きた場合にはだな」と、父は言うのである「この世の中の人がみんなおまえと同じようには恵まれているわけではないということを、ちょっと思いだしてみるのだ」

《村上春樹訳》
 僕がまだ年若く、心に傷を負いやすかったころ、父親がひとつ忠告を与えてくれた。その言葉について僕は、ことあるごとに考えをめぐらせてきた。
「誰かのことを批判したくなったときには、こう考えるようにするんだよ」と、父は言った。「世間のすべての人が、お前のように恵まれた条件を与えられたわけではないのだと」

 ここでの違いはごくわずかですが、現代日本語としてのリズムは、やはり村上春樹訳の方が優れていると感じます。

 この小説を貫く「いろんなものごとをとにかく公平な目で眺めよう」というニック・キャラウェイの姿勢が、短い文章のなかで高らかに宣言されていると思います。オリジナルを書いたフィッツジェルド、ただものではないし、「人生で巡りあった最も重要な本をどうしても1冊だけ選べと言われたら、迷うことなく『グレート・ギャツビー』を選ぶ」という村上春樹もただものではありません。


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まいじょ * * 23:38 * comments(3) * trackbacks(1)

Jobim My Love 40th

 一昨日、12月8日(金)は、Antonio Carlos Jobim の命日ですが、これにちなんで開かれた、上田力とナンダ・ノヴァの「Jobim My Love」40thを、新大久保「Space DO」で聴いてきました。

Jobim My Love 40th

 37th、38thに続き、私にとっては3回目となりますが、これまでで最高に盛り上がったライブでした。
 パーソネルは、ナンダ・ノヴァのメンバー、上田力(key)、池田雅明(trombone)、松崎義一郎(fagot)、古屋栄悦(b)、吉田和雄(ds, perc)、黒沢綾(vo)。これに今回のスペシャルゲストとして、前田有文子(fl)、鬼武みゆき(p)の2人と、さらに下記の8人によるホーン・セクションを加えた超豪華メンバーでした。
《MASA HORNS》
 内田日富、小林稔、渡辺亮:Trombone
 萱生昌樹、橋爪亮督:Sax
 田中哲也、羽毛田耕士、伊勢 秀一郎:Trumpet 
《曲目リスト》
01 - Chovendo na Roseira
02 - Ela E Carioca
03 - Samba de Uma Nota So
04 - Garota de Ipanema
05 - Insensatez
06 - Stone Flower
07 - Zingaro
08 - Samba de Uma Nota So
09 - Desafinado
10 - A Felicidade
11 - Piano Na Mangueira
12 - Jobim My Love

 前半のハイライトは、松崎義一郎さん、前田有文子さんのご夫妻によるファゴットとフルートのデュオによる「Samba de Uma Nota So」と「Garota de Ipanema」の2曲です。ボサノヴァって、フルートがよく似合いますね。セルジオ・メンデスがフルートをとても効果的に使っていたのを思い出しました。
 7曲目からの後半は、《MASA HORNS》が加わって、ちょっとしたビッグバンド風のジョビン・サウンドを堪能できました。ホーンの皆さんは、池田雅明さんのお仲間ですが、一流のミュージシャンばかりです。命日に、こんなに盛り上がった演奏が聴けて、天国のトムも楽しんでくれたことでしょう。
 この日のライブの圧巻は、鬼武みゆきさんのピアノが入った「A Felicidade」でした。いきなり超絶技巧のピアノソロから始まって、ホーンセクションが次々とからんでいく上田力さんのアレンジは絶妙でした。
 異なる楽器が加わることによって、サウンドの幅がひろがり、アレンジの巧みさも活かせますので、年に1回くらいは今回のような拡大セッションがあると楽しみですね。その時は、もう少し大きな会場にした方がいいかなと思いました。

 次回ライブは、3月25日の予定です。

  • 上田力 公式ホームページ
まいじょ * 音楽 * 00:57 * comments(1) * trackbacks(0)
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