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ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」

 日曜日(10月14日)、NHKのETV特集で「21世紀のドストエフスキー〜テロの時代を読み解く〜」という番組をやっていた。「カラマーゾフの兄弟」の新訳で今評判の亀山郁夫(東京外国語大学学長)がナビゲーター役で、金原ひとみ、森達也、加賀乙彦、ボリス・アクーニンがコメンテーターとして、ドストエフスキーの現代における意義は何かを問うた番組である。

カラマーゾフの兄弟

 私は、先週ちょうど、亀山訳の「カラマーゾフの兄弟」を読了したばかりだったので、出演者それぞれのコメントがずしりと重く心に響いた。

 実は、私はこれまで3回もカラマーゾフを読もうとして途中で投げ出した人間である。いちおう別の訳者によるものをつなげて1年以上かけて全編を読んだことはあるが、だいたい宗教の話が長く続くとそこで読む気がうせてしまった。
 「とにかく最後まで一気に読ませる」ことをめざした亀山さんのねらいは、私には見事にあたった。読み出すと、最後まで読みたくてやめられないのである。宗教上の問題など、多少意味がとりにくいところもあったが、読みたいという一心で最後まで一息に読んでしまった。

 番組の中で、亀山さんは「カラマーゾフの兄弟」を翻訳できたことの喜びを本当にうれしそうに語っていた。
 非常に単純な言い方をすると「生きていて良かった」というひと言なんですね。この小説を翻訳できたということは、おそらくドストエフスキー以外の第三者の中では最高の快楽を味わえた、最高の喜びを味わえたという、そのひと言しかないんですね。それくらい喜びを与えてくれる小説なので、言葉がないとしかいいようがない。

 私は亀山さんの翻訳ではじめて全編を通読できた喜びをひとしおに感じた。読む前と読んだ後で、大げさにいえば世界観が変わり、生きることの喜びを感じたのである。

 番組では、映画「カラマーゾフの兄弟」(1968年 ソ連 イワン・プィリエフ監督)のさわりを補足映像として挿入していた。登場人物の顔のイメージが、想像していたものとかなり近いものもあれば、ずいぶんかけ離れたものもある。これだけの長編小説だと、映画で再現はあまり期待しない方がいいと思う。しかし、登場人物や舞台の視覚的イメージを補足にするには、映画は有効な手段だろう。DVDがあればさっそく観てみたい。

左からドミートリー、イワン、アリョーシャのカラマーゾフ兄弟
ドミートリー   イワン   アリョーシャ

父・フョードル(左)と下男・スメルジャコフ(右)
フョードル   スメルジャコフ

 登場人物の中でいちばん誰に近いと思うかと妻に訊かれて、私は即座に「アリョーシャ!」と答えたが、妻は私が似ているのはドミートリーだと言い張っている。私も心の中では、「イワン!」と気取りたいところだが、イワンに影響されたスメルジャコフも通ずるところ大である。


   
まいじょ * * 19:08 * comments(5) * trackbacks(0)

コメント

私は、この夏、トルストイの『アンナ・カレーニナ』を読みました。
こちらも、トルストイの哲学がかなり細かく述べられ、時には物語に必要のないと思われる細かな描写が延々と述べられていて、読んでいて退屈することも多かったです。
アンナの物語が並走していなかったら、途中で挫折していたかもしれません。

ドストエフスキーは『罪と罰』、『地下室の手記』、『白夜』を読みましたが、かなり私には読みづらいものでした。
訳者が、読みやすくするということまで考えていただけるのなら、もう少し分かりやすくなることもあるのか・・・と思うと、翻訳って本当に難しいのだなあとつくづく感じました。

その国の言葉を知って原作を読めるのが一番、その文学を知る一番の方法なんでしょうけどね。
Comment by Aki @ 2007/10/17 11:34 PM
学生時代、「戦争と平和」は挫折しましたが、「アンナ・カレーニナ」は何とか読了しました(笑)

登場人物が多くて、時代背景がわかりにくい小説は、映画で概略をつかんでから読むと、読みやすいかもしれませんね。アンナ・カレーニナの場合は、アメリカ版よりソビエト版の方がだんぜん良かったと思います。
Comment by まいじょ @ 2007/10/18 9:33 AM
ブログへの書き込みありがとうございました。

『アンナ・カレーニナ』は私は大好きな小説です。古い翻訳で読みましたが、日本語のまずさが気にならないほど面白く読めました。特に後半、アンナが崩れていくあたりからが好きでした。
しかし、小説の感想ってやはり人それぞれ違うものなんですね。

『カラマーゾフの兄弟』も早く読んでおきたいです。
Comment by 天海カイリ @ 2007/10/28 6:55 PM
まいじょさん、良心的なコメントをありがとう。3つの層に関する仮説は、自分なりにも、他のジャンルのテクストにも応用できるかな、と思案していたところでした。しかし、自伝層は、あくまでも「告白」がコアとなりますので、そのもっとも核心部のメッセージを捉える必要があると思っています。チャプリンの場合、それは何でしょうか。次の「ドストエフスキー 謎とちから」(文春新書)では、この3層構造に修正が加えられます。
Comment by K @ 2007/11/01 1:37 AM
Kさん、わざわざお越しいただきありがとうございます。
自伝層は「告白」がコアであるというご指摘、たしかにそのとおりだと思います。
三層構造の分析が使えるものは、他にもありそうなので、今後もいろいろトライしてみたいと思います。
「ドストエフスキー 謎とちから」も読ませていただきます。あと、「罪と罰」の新訳も楽しみにしています。
Comment by まいじょ @ 2007/11/05 8:02 PM
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