<< June 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
<< 道路と超高層ビルの重複利用について はじめに | main | 道路と超高層ビルの重複利用について 3 >>

道路と超高層ビルの重複利用について 2

2017年4月『再開発研究』33号所収
「道路と超高層ビルの重複利用について
〜環状第二号線と虎ノ門ヒルズにおける市街地再開発事業による一体的整備〜」
山本正紀


はじめに
1.立体道路制度の創設と環状第二号線への適用
2.都施行再開発事業への民間活力の導入
3.環状第二号線新橋・虎ノ門地区再開発事業の計画の変遷
4.道路と建物の重複利用に伴う課題と対応策
おわりに



2.都施行再開発事業への民間活力の導入
2−1 民間活力導入の背景
 再開発事業に民間活力が導入され、公民連携による街づくりが行われるようになった時代背景を確認しておきたい。
 まず、1980年代前半の中曽根アーバンルネッサンス以降、規制緩和と民間活力による都市再開発政策が強力に推進されたことである。従来、少なくとも規模においては大きな割合を占めていた地方公共団体施行の再開発事業は縮小し、件数・規模ともに組合施行等民間再開発事業が主流を占めるようになった。
 さらに1990年代後半から2000年代初頭にかけて、公的住宅(公団・公社・公営)の供給が縮小し、新規住宅市場から事実上撤退したことである。従来は、公募に寄らないで都施行の再開発事業における特定建築者に応募することができた公的住宅建設三者は再開発事業に参画する動機も機会も失った。
 最後に1999年の都市再開発法改正により、従来は保留床のみからなる再開発ビルでのみ特定建築者制度を活用することができたものが、権利床を含む再開発ビルについても特定建築者制度を活用することが可能となった。
 こうして、環状第二号線新橋・虎ノ門地区の再開発事業が事業化する頃までには公民連携によるまちづくりが始動する条件は整っていた。
2−2 特定建築者制度の活用
 1990年代後半はバブル崩壊の後にあたり、不動産価格の下落やデフレ経済の進行により、全国的に再開発事業の収支が悪化した時期と重なる。都施行の再開発事業も例外ではなく、過去の事業による累積欠損が大きな問題となっていた。
 2001年、都は再開発事業の見直しと再構築を図り、今後の財政負担をできる限り小さくするための対応を講じるという方針を発表した。見直しの結果、都が自ら再開発ビルを建設し、保留床を処分するといったこれまでの事業の進め方を改めることとし、環状第二号線新橋・虎ノ門地区では、財政負担の軽減と民間活力の活用を図るため、特定建築者制度を全面的に導入することとした。

2−3 事業協力者方式
 しかし都市再開発法の規定により、特定建築者は管理処分計画決定後でないと募集・決定することができない。事業の早い段階から民間事業者のノウハウを導入するにはどうすればよいか。都では、打開策として法律に基づかない事業協力者方式を編みだし、特定建築者に至るまでの間、民間事業者の協力を仰ぐ仕組みを導入することとした。その目的は、施設建築物に対する民間ノウハウの早期導入と権利者の将来の生活設計や合意形成の円滑化という2点であった。2002年(平成14年)、事業協力者を公募により募集し、ディベロッパー1社とゼネコングループ1組を選定した。
 事業協力者は将来特定建築者となることを前提に応募するものであるから、当然再開発の施行区域に限定した計画が提案されるものとばかり考えていた。ところが応募したディベロッパーの企画提案書の中身をみて筆者は本当に驚いた。提案は再開発の施行区域を超えた広いエリアを対象に考えられており、皇居・日比谷から愛宕山・芝公園に至るまでの広域で緑のネットワークを形成しようと考えていた。また、最近になって公表された再開発計画を先取りするように、軍攻茲汎酲未卜拈椶垢覲攻茲魎咾デッキまで計画されていたのである 注2 。われわれ都の担当者はどうしても再開発事業を実施するエリアの中に限定して、事業完了までの期間の中で実施できる街づくりを考える。しかし、民間事業者は再開発エリアの外にも自社物件を持ち開発構想を考えていることから、街づくりを考える空間・時間の範囲が広く、事業完了後のことも考えているのである。また再開発エリアに限ってみても、後に実現する虎ノ門ヒルズへ向けてのアイデアや完成後のエリアマネジメントの考え方など、この地域に精通するディベロッパーならではのノウハウが凝縮されていた。
 もう一つの事業協力者であるゼネコングループについても、事業協力者チームの中に建築の設計・施工・管理運営に精通した者がいることにより、そのノウハウが合理的な施設計画の検討や権利者の円滑な合意形成にどれだけ役だったか分からない。また地元に本社をおくゼネコングループであったことも権利者の信頼を得ることに功を奏した。
 公民連携による事業推進の中で事業協力者が果たした役割については前記の長尾論文に詳述されているため、重複は避ける。重要なことは、「都は最終的に特定建築者として保留床を処分・運営する意思のある者を選定し、その意思のある者のノウハウを生かした計画とすることで、最終的な床の引き受け手の目処を立て、事業リスクを軽減するという意図も持っていた」という指摘である。こうしたねらいが都の中でどこまで共有されていたかはわからないが、公民連携の現場で行政側の最前線にいた筆者が事業協力者に期待した役割の眼目はまさにこの点である。事業協力者が特定建築者になるつもりで本気で出したノウハウこそ貴重であり、都としても可能な限り実現に努めなければならないと考えた。
 ただし当初のうちは、都にも権利者にもドラスティックな提案内容について抵抗する向きもあった。しかし、事業協力者として都と公民連携関係を構築し、権利者の信頼を醸成していく中で、提案内容は時間をかけて受容されていった。
 特定建築者の募集は、事業の進捗に合わせて街区ごとに管理処分計画が決定した段階で行われたが、公募によるため事業協力者だからといって必ずしも特定建築者となれるという保証はない。

表1 事業協力者から特定建築者への移行
表1事業協力者から特定建築者への移行

 実際最初に募集した恭攻茲任蓮∋業協力者のゼネコングループも応募したが、事業協力者でない商社が特定建築者に選定された。続く騎攻茵↓軍攻茲任呂箸發忙業協力者が特定建築者に選定された(表1)。いずれも価格点と技術点を合計した総合評価による厳正な審査の結果である。事業協力者としての期間が約2年と短かった恭攻茲任六業協力者が選定されず、約5〜7年と長かった騎攻茵↓軍攻茲任呂修譴召貉業協力者が選定された。事業協力の期間が長くなればそれだけ民間ノウハウの施設計画への反映が十分にできたとともに、事業協力者は多くの情報を得ているために事業収支の検討も精緻に行うことができたため、応募の際に優れた提案や高い入札価格を提示することができたためとも考えられる。
 当地区の場合、事業協力者方式による公民連携が非常にうまく機能して、民間ノウハウの導入や権利者の合意形成が円滑に進めることができた。また、特定建築者の募集にあたっては、公募により競争性を確保した上で最善の条件を提示した者を特定建築者に選定することができたと考えている。

注2 軍攻茲領拈楹攻茲呂修譴召貂導発事業が行われ、北側は「(仮称)虎ノ門ヒルズビジネスタワー」、南側は「(仮称)虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワー」、西側は「(仮称)虎ノ門ヒルズステーションタワー」となる予定となっており、虎ノ門ヒルズと3棟のビルは人工地盤でつなぐことを計画している。

続き 3.環状第二号線新橋・虎ノ門地区再開発事業の計画の変遷
まいじょ * 再開発 * 09:38 * comments(0) * trackbacks(0)

コメント

コメントする









トラックバック

このページの先頭へ