2017年4月『再開発研究』33号所収
「道路と超高層ビルの重複利用について
〜環状第二号線と虎ノ門ヒルズにおける市街地再開発事業による一体的整備〜」
山本正紀
はじめに
1.立体道路制度の創設と環状第二号線への適用
2.都施行再開発事業への民間活力の導入
3.環状第二号線新橋・虎ノ門地区再開発事業の計画の変遷
4.道路と建物の重複利用に伴う課題と対応策
おわりに
1.立体道路制度の創設と環状第二号線への適用
環状第二号線は、神田佐久間町と有明を結ぶ総延長約14kmの都市計画道路で、都心部の渋滞解消や臨海部とのネットワーク強化を図るうえで、極めて重要な路線である
(図1)。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催時には、選手村と競技場等を結ぶことが予定されていた。
図1 環状第二号線全体図
出典:東京都(2015)
環状第二号線の新橋・虎ノ門間は、戦後間もない1946年に都市計画決定されながら、長年の間未整備のままとなっていた。1993年に環状第二号線は臨海部への延伸が決定し、都心部と汐留、さらには臨海部の勝どき・晴海・豊洲などとを結ぶ骨格路線となり、重要性がさらに高まった。都では1980年代から環状第二号線の整備を急ぐために、通常の用地買収による道路事業はもちろん大街区方式区画整理事業(スーパー区画整理事業)など様々な事業手法を模索したが、なかなか事業化には至らなかった。事業化が難しかった最大の理由は地価が高いことである。対象となる区間は都心の一等地であり、バブル期には用地費だけで数千億円を要するとみられた。この隘路に決定的な打開策を与えたのが、1989年の立体道路制度の創設である。
立体道路制度とは、土地利用の合理化を図るための取り組みの一環で、道路区域を立体的に定めることにより、道路区域の上下空間に建築物を建てることを可能とした制度である。この制度を活用することにより、建築側では道路の上下空間も含めた土地の有効利用が可能となり、道路側は道路の用地取得にかかるコストを大幅に縮減することができる。都は立体道路制度を活用した都施行市街地再開発事業により環状第二号線を整備する方針を決定し、計画案の検討を始めるとともに地元との協議を始めた。
写真1 事業着手の頃
出典:細見(2015)
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