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オペラ「カラ兄」の評判(その4)

 オペラ「カラマーゾフの兄弟」の批評の第4弾。今回は、7月のサンクトペテルブルグでの世界初演についてのものではなく、9月のロッテルダムで演奏会形式で行われたヨーロッパ初演についてのものである。

グルーシェニカとミーチャ

 ロンドンのバービカン・ホールでも、やはり来年2月にオペラ「カラマーゾフの兄弟」の公演が予定されているので、マスコミの関心も相当に高いのであろう。今回の記事は、イギリスの新聞(『The Independent』)に掲載されたものである。拙訳で紹介する。

ゲルギエフとマリインスキー
ドーレン・コンサートホール(ロッテルダム)


評者:マイケル・チャーチ

2008年9月15日月曜日

 ドストエフスキーの強迫観念は、肉体的かつ精神的な痛みを伴い、強調がたえまなく続く文体となって、「カラマーゾフの兄弟」が大受けするような理想の本ではなくしている。この900ページの感動的な大作は、オペラ向きの理想的な素材ではない。これを原作にしたオペラは2つあるが、どちらも時の試練に耐えるものではなかった。

 ここでロシアの作曲家アレクサンドル・スメルコフによる作品が現れたが、スメルコフと現在の指揮者ワレリー・ゲルギエフとのつながりは1974年にまでさかのぼる。その年、スメルコフの卒業制作作品は、芸術学校の同窓の学生だったゲルギエフというによって指揮されたのである。最近サンクトペテルスブルクで初演されたスメルコフのオペラが、ロッテルダムで演奏会形式により上演されたのを聴くことができた。このオペラは、2月1日、ゲルギエフとマリインスキーはロンドンのバービカンでも上演されることになっている。

 ジークムント・フロイトとアルベルト・アインシュタインは、ドストエフスキーの小説を最も早くから評価する思想家であったが、他の多くの人々はドストエフスキーの主張について議論してきた。ある意味では、19世紀のロシアにおいて、「信仰と理性」、「キリスト教の信仰と無神論」、「保守主義とニヒリズム」といった対の間にある思想の激しい対立を具現化したものである。一つの重要なイメージは、地上に復活し、イエズス会の司祭(訳注:大審問官)により追われるイエスである。また、もう一つ重要なのは、カラマーゾフ家の人々の生活にすっかりしみ込んでいる「聖者/罪人のパラドックス」(訳注:われわれは聖者であると同時に罪人であるというキリスト教独特のパラドックス)である。物語の構造は、黒澤映画の「羅生門」のそれと似ている。この映画では、3人の主人公の誰が重要な殺人を犯したかについて考えさせたままなのである。しかし、筋を燃え立たせるものは、子の激怒、性的妄想、子供をなくしたトラウマといった感動的な材料である。

 スメルコフは大きな思想に焦点を合わせた。冒頭から彼の交響的なスタンスは明白であり、挑戦的な調性の作品である。しかし、この伝統的な枠組みの中に彼はいくつもの素晴らしい音楽の瞬間を魔法で呼び出す。男声八重唱は、決して忘れることはない。あのアリアには、主要人物アリョーシャの夢を反映する鐘と静かなダブルベースが伴奏した。スメルコフはまさしくマスター作曲家である。

 ゲルギエフと彼のカンパニーがロッテルダムと同じようなパフォーマンスをバービカンでもするなら、われわれは素晴らしいものを観ることになる。テノールのワシリー・ゴルシコフとアヴグスト・アモノフの二人は、バリトンのウラジスラフ・スリムスキーや、ソプラノのエレーナ・ネベラ、メゾソプラノのナタリア・エフスタフィエヴァ、そして扇動的な輝きのオーケストラの演奏によって補われている。

 なお、本場マリインスキー劇場では、2008年内に10月10日、11月4日、5日と3回「カラマーゾフの兄弟」の追加公演が予定されているが、指揮はゲルギエフではなく、作曲家の息子パヴェル・スメルコフとなっている。

The Brothers Karamazov(マリインスキー劇場のホームページ)

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Mariinsky / Gergiev, De Doelen, Rotterdam

Reviewed by Michael Church

Monday, 15 September 2008

Dostoevsky's obsession with physical and mental pain, coupled with his relentlessly emphatic style, means that The Brothers Karamazov is not the ideal book to curl up with. Nor is this 900-page emotional odyssey ideal fodder for opera: two operas have been drawn from it, but neither has stood the test of time.

Now comes a shot by the Russian composer Alexander Smelkov, whose links with his current conductor go back to 1974. In that year Smelkov's diploma piece was conducted by a fellow student at the conservatoire named Valery Gergiev. I caught Smelkov's opera, which recently premiered in St Petersburg, in a concert performance in Rotterdam; on 1 February, Gergiev and the Mariinsky will bring it to London's Barbican.

Sigmund Freud and Albert Einstein were among the first thinkers to hail Dostoyevsky's novel, but many others have debated its message. At one level it embodies 19th-century Russia's furious clash of ideas: between faith and reason, Christianity and atheism, conservatism and nihilism. If one key image is of Jesus coming back to earth and being sent packing by a Jesuit priest, others turn on the saint/sinner paradox which pervades Karamazov family life. And its narrative structure adumbrates that of Kurosawa's film Rashomon, in that we are left guessing as to which of the three protagonists committed the pivotal murder. But what fires the plot is gut-emotional stuff: filial rage, sexual obsession, and the trauma of losing a child.

Smelkov focused on big ideas. And from the opening his symphonic stance is clear: this is a defiantly tonal work. But within this traditional frame, he conjures up some wonderful musical moments: I shall not forget the male-voice octet, accompanied by bells and hushed double-basses, which reflects the hero Alyosha's dream. Smelkov is a master-orchestrator.

If Gergiev and his company perform at the Barbican as they did in Rotterdam, we're in for a treat. The tenors Vasily Gorshkov and Avgust Amonov were complemented by baritone Vladislav Sulimsky, soprano Elena Nebera, and mezzo Natalia Evstafieva, plus orchestral playing of incendiary brilliance.

(The Independent)
まいじょ * オペラ * 16:24 * comments(0) * trackbacks(0)

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