<< August 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 「ゲルギエフとサンクトペテルブルグの奇蹟」 | main | 明日ペテルブルクに出発 >>

オペラ「カラマーゾフの兄弟」事前情報

 今回のロシアの旅のハイライトは、オペラ「カラマーゾフの兄弟」の世界初演を観ることだが、このオペラについて現在日本で得られる情報はごくわずかしかない。

マリインスキー劇場

 まず、マリインスキー劇場のホームページから。

Wednesday, 23 Jul 2008, 19:00
Mariinsky Theatre
1, Teatralnaya Square

The Brothers Karamazov

opera mystery in two acts after the novel by Fyodor Dostoevsky
Music: Alexander Smelkov
Production by Vasily Barkhatov (2008)

Conductor: Valery Gergiev

Libretto by Yuri Dimitrin
Musical Director: Valery Gergiev
Stage Director: Vasily Barkhatov
Set Designer: Zinovy Margolin
Costume Designer: Maria Danilova
Lighting Designer: Damir Ismagilov

Premiere at the Mariinsky Theatre: 23 July 2008

MARIINSKY THEATRE

 サンクトペテルブルクの英字紙のWEBにこんな記事があった。

 今年の白夜祭でも世界初演のアレクサンドル・スメルコフのオペラ「カラマーゾフの兄弟」が上演される。スメルコフは、サンクトペテルブルクの作曲家で、彼の息子パヴェル・スメルコフはしばしばマリインスキー交響楽団の指揮を行っている。現代作曲家をクラシックホールでとりあげようというゲルギエフの運動の一環として、マリインスキー劇場からオペラの作曲を委嘱されたものである。
The St. Petersburg Times


 この精神において、今月は世界初演のアレクサンドル・スメルコフのオペラ「カラマーゾフの兄弟」が上演される。アレクサンドル・スメルコフは、尊敬されるサクンクトペテルブルクの作曲家で、マリインスキー劇場からオペラの作曲を特に委嘱された。

「作曲家は、ドストエフスキーの傑作に対しやや型破りのアプローチを提案した」とゲルギエフはいう。「彼が最も興味をもち、焦点をあてたのは大審問官のせりふである。この作品はすべての人々の好みに合うものではないかもしれないが、こうした実験が劇場を活性化させるものと私は確信している。」

 10年前、ゲルギエフがロシアを世界一のクラシック音楽の国にすると誓ったとき、彼が最初にしたことは、世界で最も有名なオペラをあえてロシア語で公演する試みだった。
The St. Petersburg Times


 ゲルギエフが深く関わるロッテルダム・フィルの「ゲルギエフ・フェスティバル2008」に今のところもっとも詳しい記事が載っていた。ロッテルダムでは、9月にカラマーゾフの兄弟のヨーロッパ初演が行われる予定になっている。

 9月7日日曜日に、ゲルギエフ・フェスティバル2008では、ロシアの作曲家アレクサンドル・スメルコフによるオペラのヨーロッパ初演を提供する。 ワレリー・ゲルギエフはマリンスキー劇場の交響楽団、合唱団、およびソリストたちを指揮する。スメルコフ(マエストロ・ゲルギエフが個人的に見いだした)は、ロシアの戦後世代の偉大な作曲家の一人であると考えられる。 スメルコフの音楽は、ときにシンプルに思わせる、強く、控え目なテンションが特徴となっている。例えば、オペラ「カラマーゾフの兄弟」は、スメルコフが成長したブレジネフ時代の厳しいソビエト・ロシアを強く意識させるものである。
Gergiev Festival 2008 - Hemel en Aarde -


 アレクサンドル・スメルコフのオペラ「カラマーゾフの兄弟」(ドストエフスキーの同名小説による)で、大審問官は「誰か火焙りにされるのに値するとすれば、まさしくおまえだ」と言った。他の者に対してならばともかくとして、神の子イエスに対して大審問官は非常識にもこう言い放ったのである。復活したイエスはまるで極悪人のように鉄鎖でしばられた。「なぜ、われわれの仕事を邪魔しにきたのだ?」

 ラスカトフ、マルティノフ、スミルノフといった作曲家とともに、アレクサンドル・スメルコフ(1950年生まれ)は、ロシアの作曲家の戦後の世代に属する。彼らは、1970年代に登場し、流行のモダニズムのただ中にあって、彼ら独自の音楽を見いだそうとした。スメルコフ自身は、ロシア・アヴァンギャルドに対して強く反発した。彼は、ロシア・アヴァンギャルドを「暗くて、破壊的な力があらわれたもの」と言ったことがある。スメルコフは、「精神性と調和」(spirituality and harmony)こそが最善のものであり、「全世界的な人間の統合」(universal brotherhood)が彼の最新作のテーマだという。

 スメルコフの言葉は、ソビエトの公式のイデオロギーに盲目的に従う作曲家の原則の宣言のように聞こえる。 「全世界的な人間の統合」は、実際にスメルコフの新作オペラで大きな役割を果たしている。大審問官は「人間は統制され、自由をあきらめ、われわれの意志に委ねたときにはじめて、自由になるものだということを納得させられる」。スメルコフが育ったブレジネフ時代のソビエトを想起しないでは、これらの言葉を受け止めることはできない。これは、疑いもなく、未熟な判断のようにみえる。

 でも、このような混乱は理解できないわけではない。スメルコフの音楽には、変な突出
や欠落がない。 彼の最初の交響曲(1974)がすでにそうであった。 作品は、大学2年生のワレリー・ゲルギエフの指揮で初演された。ゲルギエフは、スメルコフの新作オペラをおしすすめる力となっている。数年間にわたって、ゲルギエフはスメルコフの進歩とともに歩んできている。微妙なリリシズムと分かりやすいメロディーが進歩し、常に質の高い作品を生んでいる。スメルコフ作品の質が高かったからこそ、彼はロシアで評価を得ているが、皮肉なことに、西側ではまったく無視されてきた。

 しかし、流れは変わりつつある。 今夏、スメルコフの「カラマーゾフの兄弟」は、サンクトペテルスブルクで初演される。その後、ゲルギエフ・フェスティバル2008(ロッテルダム)やロンドン(2009)でも上演される予定である。音楽におけるモダニズムは、新しい旋律の美しさ(New Melodiousness)にとってかわることになる。「精神性と調和」は君臨する。 スメルコフにとって期は熟したようだ。今や「普遍的な人類愛」を待つのみだ。
Gergiev Festival 2008 - Hemel en Aarde -


 フョードル・カラマーゾフが殺されたとき、彼の三人の息子全てが動機を持っているように見えた。 続く過程で、霊的なドラマは展開した。 だれが殺人を犯したかの謎は、自由意思のようにそこほど重要でなくなるように思える。 ジークムント・フロイトによると、カラマーソフの兄弟は今まで書かれた中で最も良い小説である。 アレクサンドル・スメルコフは、彼のオペラを「大審問官」という主要な章をベースとした。 今夏、オペラはサンクト・ペテルスブルクで初演することになっている。
Gergiev Festival 2008 - Hemel en Aarde -

 どうやらオペラ「カラマーゾフの兄弟」は「大審問官」の章に焦点をあてるようだ。あの難解なやりとりをどうやって脚色するのだろうか。
JUGEMテーマ:ロシア


まいじょ * オペラ * 20:30 * comments(0) * trackbacks(0)

コメント

コメントする









トラックバック

このページの先頭へ